『いっしん虎徹』

2004年に第11回松本清張賞を受賞し、映画化もされた『火天の城』(文芸春秋)という小説をご存知だろうか。この小説の執筆を経て山本兼一氏は「職人がおもしろい。万鍛冶のことを書きたい」と思った。そして、『いっしん虎徹』(文芸春秋)が生まれた。「刀の基本的な作り方は時代を越えて伝わっている。けれど鉄は時代によってまるで違う。虎徹は古鉄卸しの技法が得意た刀工で古い鉄を再生させている。虎微を選んだので、鉄の日本史が書けるから江戸期の新しい鉄は、虎徹であれば古い鉄 。虎徹は万工としては出来に差があるのが難だが、すばらしい虎徹はとても品格がある」。応永以降に刀なしと言った江戸期の刀工水・水心子の言葉を証明するかのように、山本氏は古い鉄を愛していた。なお、山本兼一氏は1956年、京都市生まれで、同志社大学卒業、出版社勤務、フリーランスのライターを経て作家になった人物である。