硬骨の老将が伝えた剣

近衛天皇の代、御所に夜な夜な鶴 (ぬえ)が現れた。その鳴き声に体調を崩した天皇は、妖怪退治では多くの実績を残している源頼光の子孫、源頼政にこれを退治させた。その褒美として賜 った のが名刀・獅子王である。獅子王は柄に近い部分は極端な反りを持っているが、刀身は直万に近い形状をしている。 一見使い難そうな印象だが、これは馬上からの斬り おろしを念頭に入れた造りなのではないかと言われている。 武勇に優れ名門の血をひいていた頼政だったが、当時朝廷の重要な役職、官位は平氏の 一族に占められており、源氏の 一族は冷遇されていた。 頼政がようやく昇殿を許されたのは六三歳になってからのことだった。 頼政はこの状況を覆すため、七六歳で挙兵し、平氏に戦いを挑んだ。しかし逆に先制攻撃を受けて敗退する。頼政は自刃し、獅子王は同族の土岐氏に渡った。その後獅子王は皇室に献上された。